タロットカードの昼と夜

「二律背反性」をテーマにタロットカードの意味を解説していきたいと思います

大アルカナ2番「女教皇」の意味


はじめに

今回のカードは、大アルカナ2番の「女教皇」です。

このカードは、水色を基調としたさわやかなデザインと言えないわけではないですが、威厳ある女性が真正面を見据えていて、冷たい感じを与えるカードでもあります。

情熱的というよりは、明らかに理性的で、メッセージは分かりやすいような感じもしますが、実は、女性が静かに思索にふけっている姿勢の解釈を巡って見解は二つに分かれます。

この女性が見つめているのは何なのか。

1つは、この女性は静かに自分自身と向き合っているという解釈で、もう1つは、この女性は状況を冷静に見つめていという解釈です。

前者ですと、雑念から離れ本音ともいえる自分の感性や直感に向き合うことの重要性を説く方向に解釈は向かいますが、後者ですと、冷静に状況を分析して理性的な行動を取ることの重要性を説く方向に向かいます。

もちろん両方を合わせることも可能なのですが、私は後者の方の、感情を抑えて知性を発揮することの重要性を説いているという理解に惹かれます。

カード全体に漂う冷たい雰囲気をどうしても無視できないからです。

絵の解釈

まず、全体的に落ち着いたモノトーン調のデザインにおいて、にぎやかな女性の後ろのカーテンが目に入ります。

このカーテンには、ヤシの木とザクロの実が豊潤に描かれ、実りある生活、と言ったものを表現していると思われます。

では、一体何が、実り多い豊かで潤いのある人生につながるのか。

両端に黒と白の柱があり、それぞれ、BとJと書いてあります。

これは、BOAS(ボアズ)JAKIM(ヤキン)であると考えられており、それぞれ闇と光を表します。

もっとも、闇と光をそのままとらえる必要は無くて、陰と陽、静と動、といったような二つの対立する概念の象徴ととらえていいと思います。

女性が二本の柱の真ん中に座っていることや、実りを表すカーテンが二本の柱にかかっていることは、自分の希望とるか相手を尊重して妥協するか、積極的か消極的かなど、対立する概念の中で、どちらか一方に偏らずに、バランスを取ることの重要性を説いているのかと思います。

また、女教皇は十字のネックレスをしていますが、キリスト教の縦長の十字架とことなり、上下左右対称の形をしています。

これも、四方のバランスを取る姿勢を暗示していると考えられます。

そして、カーテンと柱の隙間からは、澄んだ青空と穏やかな水面が見え、同じ色のドレスを着ています。

これは、澄んだ心と穏やかな感情を女教皇が持っていることを示しているのだと思います。

また、頭の冠は月の相を表し、足元の三日月とともに、女教皇が時の流れや運命の流れといった、物事の全体像を見据えていることを暗示しています。

そして、女教皇はてにTORAと書かれた書物を持っていますが、これはユダヤ教の聖典の1つであり、知性の象徴と言えます。

以上から、この女教皇は、時の流れや運命の流れを見据えつつも、澄んだ心と穏やかな心を持って、極端な姿勢に寄ることなく、バランスを取りながら、知性と向かい合っていることを示しているのだと思います。

つまり、このカードは、感情の動きを抑えて知性を発揮することの重要性を説いていると解釈できるわけです。

ファクトフルネス

『ファクトフルネス』という本があります。

著者はスウェーデン人の医師で、ファクト、すなわち事実に基づいて、冷静に判断・行動することの重要性を説いた本です。

その中に、象徴的なエピソードが登場します。

著者はスウェーデンとインドで医学を修めた後、医師としてアフリカのモザンビークのとある地域で働き始めます。

毎日何人もの危険な状態の乳幼児が病院に運び込まれてくるのですが、設備も人手も足りず、20人に1人は死んでしまうという状況です。

そんな状況なのですが、この著者は、病院に運び込まれてくる乳幼児には、生理食塩水や栄養剤の投与といった最低限の治療しかしません。

あるとき、同じスウェーデン出身で、著者と同じようにアフリカで医療活動している友人が訪ねてくるのですが、最低限の治療しかしない態度に激怒して、大喧嘩になります。

この著者は、なぜ運び込まれてくる赤ちゃんたちに最低限の治療しかしなかったのか。

それは、自分の管轄地区の衛生環境がひどく、病院に運び込まれる乳幼児の数の数倍もの乳幼児が病院の外で死んでいることを知っていたからです。

目の前の患者の治療に全力を尽くして忙殺されることよりも、なるべく時間を作って、広大な担当地区を地道にまわり住民相手に講習会をしたりして、地域全体の衛生環境を向上させることの方が遥かに重要であることが分かっていたからでした。

友人は理解してくれず、医師として目の前の患者に全力を尽くすべきだと主張し結局けんか別れに終わるのですが、この著者は、自分が何をすべきか、優先順位は明白だったと述べています。



この例は、患者の命が懸かっているという点で究極の例ですが、沸き起こる感情に支配されて冷静な判断が出来なくなる状況というのは誰でもあります。

そして、あれもこれもと四方良しを望んだところで、全てを得ることはできなくて、取捨選択というか、何かを捨てなくてはいけない場面というのは出てきます。

そうした場面においては最後まで冷静に悩むことは非常に難しくて、つい感情的な選択をしてしまいがちです。

上の例の友人の医師の意見も、本人的には正義感や医師としての使命感にかられた意見なわけですが、目の前の患者の治療に忙殺されて、地域の衛生環境を悪いまま放置したら、途上国の医療状況は何も向上しないわけです。

こういった選択を迫られるのはなにも特別の地位にある人だけではありません。

沸き起こった正義感にそのまま身を委ねたり、とりあえず現状維持に全力を尽くしたり、がんばっているようで実は、先延ばしにして逃げているだけだったという経験は誰にでもあります。

しかし、この本の著者のように、切羽詰まって感情が高まるときこそ、事実を認識し、心を落ち着けて冷静に判断することが重要になります。

まさにこのカードのように、全体最適のためには、周りからは冷たい人間と思われるくらい冷静にならなくてはいけない場面だってあるわけです。

感情を落ち着かせて、理性的に行動するということは、多くの場合、何かを妥協することになります。

こちらは捨てても、あちらを取る方が最善なのだという、目の前の何かを捨てる可能性が高くなります。

そういった態度は、直接的な当事者や全体的な責任者ではない人には、心無い冷たい人間であるかのように映るものです。

タロットカードの中では知性が剣で表現されていることからわかるように、知性や理性というのは、感情的な行動を捨てて、事実をバッサリ切るという点で本質的に冷たいものなわけです。

このカードは、理性的でバランスを取った行動こそが実りをもたらすことを暗示していますが、その一方で、そういった態度の冷たさもしっかり表現しています。

王陽明の言葉

王陽明というのは中華思想の1つである陽明学の始祖の人です。

王陽明には以下のような有名な言葉があります。

「世間では失敗することを恥とみなすだろうが、自分は失敗により心が動揺することを恥とする」

これは、個人的には非常に名言だと思います。

誰でも失敗しますし、起きてしまったことは悩んでも仕方がありません。

同じ失敗を繰り返さないように、反省し、原因を分析して、次に生かすことが重要です。

言われなくても、誰だってそうしようとします。

しかし、王陽明は言うわけです、失敗を反省するにしても、そもそも、あなたの心は失敗を引きずって冷静さを失っているんじゃないの、と。

それでは何もならないと。

もちろん、過去の失敗に奮起することも重要ですし、失敗から学んで成長することも重要です。

しかし、もし失敗を引きずり、心が冷静さを欠いていれば、そんな状態で過去を反省し失敗を分析しても、物事は間違った方向に行くだけです。

上述の医師の例のような切羽詰まったような状況でなく、自分としては事実を分析して理性的に行動しようとしている状況でも、ショックを引きずって心が動揺していて、何かを判断・行動するような状況ではない場合もあります。

大事な場面では、知性を生かして判断・行動することが重要となりますが、理性的判断の前提として、湧き上がる感情を抑え、事実とありのままに向き合うことが何より大切なわけです。

このカードの意味

私はこのカードの解釈において一番重要なことは、女教皇が、カーテン越しに見える背景の空と水面と同じ色のドレスを着ていることだと思います。

雲一つない澄んだ空のような心と波のない水面のような穏やかな感情。

女教皇は、それらを象徴する水色のドレスに身を包みながら、知性の書を抱え、冷静に真正面を見据えています。

時間の流れや運の流れと言った大きな全体像の中のありのままの事実を見つつも、湧き上がる感情を抑え、バランスを保ち、落ち着いて思案する態度こそが、実りある人生につながるんだと説いているのがこのカードなんだと思います。

しかし、感情を抑えて理性的に判断しようとする態度が持つ冷たさも上手く表現されていて、見事なカードだと思います。

まとめ

正位置
成功するためには、澄んだ心でありのままの事実を受け止め、感情を抑え、バランスを取り、知性を発揮することが重要。

正位置の裏
感情を抑えて知性を発揮するということは、一方に寄ることを避けバランスを取ることでもあり、周りには冷たい印象を与える。

逆位置
感情的になり冷静さやバランスを欠いている。また、理性的に行動しようにもイライラしていたり過去に囚われているせいでうまくいかない。


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テーマの著者 Anders Norén