タロットカードの昼と夜

「二律背反性」をテーマにタロットカードの意味を解説していきたいと思います

大アルカナ6番「恋人」の意味

はじめに

今回のカードは大アルカナ6番「恋人」です。

このカードはわかりやすいようで解釈が大きく分かれるように思います。

というより、いわゆる初心者が、恋人とか愛とかのイメージから、正位置であれば恋の成就とか幸せな結婚、逆位置であれば破局や離婚、といった単純な解釈を導こうとするのに対して、解説書などでは、ここぞとばかりに深い解釈を見せようとしていたりします。

このカードを見て最初に思い出すのは、有名書『大アルカナタロット練習帳』のリーディング例の一節です。

明日の英語のテストはどんな成績でしょうかという質問の対して、3枚引きの過去のところにこのカードが出てくるわけです。

すると、いきなりどストレートに、

このところ恋人が二人できて三角関係になってしまい、勉強どころではなく成績も落ちてきました。

といったリーディング例が登場します。

なかなかギャンブルすぎるリーディング例で笑ってしまうのですが、タロットリーディングというのはこれくらい自由でよいですし、なにより自分のインスピレーションを堂々と主張する有名プロの潔さは、つい自由なイメージを忘れて権威的なものに解釈を頼ってしまう初心者にとって非常に良い解説だと思います。

また、吉か凶かを占う道具というシンプル思考を重視すれば、この程度の解釈でよいかと思います。

しかし、占うのは何も恋愛運ばかりとは限りませんし、このカードが出たからと言ってリーディング途中に必ず恋愛沙汰を登場させるのも不自然な場合があります。

もっと普遍的な意味を探りたいところです。

絵をきっかけとして、自分なりの想像力を働かせ、人生の深奥をのぞき込もうとする私としては、まさに深読み意欲をかきたてられるところです。

Loveの意味から考える

このカードから恋愛・結婚だけでなく普遍的な意味を導くために、まず、Loveの意味しっかりと理解するところから始めたいと思います。

ものすごいカッコつけた物言いをしますが、目に見えるものに名前を付けるところから言葉が始まり、目に見えないものに名前を付けるところが文化が始まります。

英語を勉強し始めの時には英語の本当の難しさ、さらには外国人とのコミュニケーションの難しさがなかなかわかりません。

本をBook、車をCar、水をWaterと呼ぶと言われてもフーンで済みます。目に見えるものをどう呼ぶかの問題で、そこにミス・コミュニケーションは発生しません。

しかし、目に見えないものの話をしだすと途端に難しくなります。

辞書で神様を調べると、Godという訳が出てきます。しかし、神様と聞いて私たちが思い浮かべる神様と、Godと聞いて欧米人が思い浮かべるものは全く違います。そして、私たちが思い浮かべる神様を英語で説明するのは極めて難解で、そもそも、そういう概念自体がないわけですから、究極的には説明不可能もしくは日本に何年か住んでもらうしかありません。

辞書を開けば、目に見えるものだけでなく、目に見えないものも、心はMind、魂はSoul、概念はConceptなどと、さも一対一で対応するかのような説明がなされていますが、それぞれの単語の射程は文化ごとに違い、単純に日本語を直訳しても全然伝わらないなんて話は外国人と飲みに行ったことがある人は良く知っているはずです。

いきなり何の話をしてるのかと思わないでください。

この大アルカナ6番Loversというカード理解する上で非常に重要な話なのです。まさにLoveがそうだからです。

話は室町時代、だれもが顔だけは知っているフランシスコ・ザビエルまでさかのぼります。

キリスト教の宣教師たちが日本に初上陸して布教を始めた時、あまりに日本文化が特殊すぎて苦労続きなのですが、その中でも大苦戦したのが、Loveの訳でした。

当初は、現在のように、愛とか愛すると訳そうとしたそうです。

しかし、この説明が日本人に全く伝わらない。当時の武士社会の日本においては、愛という単語は、愛にうつつを抜かすという表現につながるもので、武士としての本分を忘れさせる誘惑的なもので、あまり良い意味ではなかったわけです。

もちろん、妻や夫を愛する、わが子を愛する、といった良い側面もあるのですが、お上(殿様)に使えることが至上命題の人々にとっては、自分の本分を忘れる堕落といった裏側の意味が強かったわけです。

今でも(最近の若者は知りませんが)、妻や夫、彼女や彼氏に、愛してるなんていうのは、恥ずかしさを感じるのが普通でしょうし、なんだか嘘ついてるような浮ついた変な気分になることも多いかと思います。

現代ですらそうなのに、今とは比較にならない封建的な格式ばった社会にいきなり、見慣れない外国人がやってきて、お互いに愛し合いましょうと説く。怪しさ全開で全く受け入れられないわけです。

さらに致命的なことに、キリスト教の場合、神様まで我々を愛するわけです。

しかし、古事記や日本書紀に登場して悪と戦ったりする神様や仏教に登場する神様たちではありえない話で、日本人のリアクションは、神様のくせに愛にうつつを抜かすとはとんでもない、神様自身が堕落してどうすんだ、世界を司る神様ならほかにやることあるだろ、というものだったそうです。

そこで当時の宣教師たちは、Loveを「愛する」と訳するのを止めます。なんて訳すのかというと「大切にする」と訳したそうです。

神様は皆さんのことを大切します、皆さんも神様のことを大切にするとともに、お互いを大切にしましょう、としました。

なかなか良いセンスで、これだと、かなりしっくりくるんじゃないでしょうか。

私もLoveの意味は「大切にする」と捉えた方がしっくりきます。少なくとも、愛という言葉のもつイメージが強烈すぎて、自由な解釈が出来なくなる不自由さを感じるので、カードの普遍的な意味を導く前提として、まず最初にLoveの意味を考えてみました。

Loversの本質

このカードのタイトルはLoversですから、「恋人(達)」と訳するのは問題ないと思います

しかし、このカードは幸せいっぱいの恋人たちを表し、恋の成就や結婚を意味しますと言ったときに、他のカードと比べて明らかに内容の少なさというか、薄さを感じてしまいます。

そんな中、ライダーデックを買うと箱の中に入っている英語の小さな解説冊子を見ていると面白いことが書いてあります。

Lovers represents balance between 2 forces.

と書いてあるのです。

つまり、このカードは、二つの力の間のバランスを表していると、書いてあるわけです。

私は、この説明が数々の書籍より一番しっくりきました。

恋愛の場合、二つの力のバランスが取れていない状況、つまり、片方が他方に飲まれている場合というのはよくあると思います。

一人が先に惚れて告白し、された方は今一つよくわからないままOKして、付き合うことになったから始まり、片方の「あなたといると楽しい、落ち付く、安心できる」という一方通行の強い矢印があって、一見したところ相思相愛のようで実際に一緒にいると楽しいのだけれど、本当は片側が一方の矢印を受ける側に回っているという恋愛です。

男側の体目当ての恋愛というのはわかりやすいものですが、そこまで極端でなくても、さみしさから付き合うことになった、片方が強すぎる愛という名の下に支配欲全開で強力に束縛する等、上述の「相手を大切にする」という意味からは程遠いLoversは多い気がします。

もっとも、出会ってすぐに自分を差し置いて相手を大切にしたいなんて思うこと稀というか、あり得ませんから、きっかけはどちらかからの一方的な矢です。

しかし、きっかけは一方通行だとしても、一緒に過ごしていく時間が増えていく中で、二人で過ごす時間が安心できるいつもの日常、非日常から帰る場所となり、それの維持が自分にとっては非常に重要になってきます。

自分が楽しくなるという目的から、相手を一緒に過ごすという、相手なしには成立しない時間と空間の維持が大切になり、そこから相手を大切にする感情が芽生え、最終的にお互いを尊重しあって、大切にしあう関係なのだと思います。

以上から、Loversが表しているのは、二つの力のバランスという意味になるのだと思います。

こう解釈すると、恋愛関係に限定されずに、人間関係一般に適用することが出来ます。

絵の解釈

このカードの絵の解釈は上記の意味から私はシンプルに捉えます。

カードを見ると登場するのは3人(?)です。男、女、天使です。

構図としては、男は女性を見ていて、女性は天使を見ています。

ここで、「情熱的で熱しやすい男は女性しか見ていない一方で、冷静な女性は天使を見て理性的な判断を使用しようとしている」、といったステレオタイプな男女観に基づいた解釈をすることもできますが、ちょっと無理があると思います。あえて男女観を持ち出す必要はないでしょう。

一人は相手しか見ていないのだけど、相手側はその矢印に飲まれるのではなくて、理性的な判断をしようとしている。

つまり、一方で相手のことを考えながら、他方で関係全体のことを考えて、バランスが取れている関係が構築され、それを天使が祝福している、という解釈です。

相手のことが好きだという自分の気持ちももちろん大事なのですが、それと共に相手を尊重して関係を維持することも重要で、情熱と理性、自己実現と相手の尊重等、バランスのとれた関係が描かれているという解釈です。

裏の意味

このカードの裏側つまり、バランスのとれた関係の裏側というのは、妥協や決断だと思います。

結婚相手の妥協とかではなく、自己実現への妥協だと思います。恋愛や結婚には必ずついてくる側面です。

私たちは一人一人、目標なり目的なり、目指すべきものを持っています。また、他者から見ればわがままでしかないような欲求も持っています。

しかし、恋愛や結婚を通じて、相手との共同生活の維持のためには、相手を尊重することが必要なってきます。

恋人にしろ夫婦にしろ、100%同じ方向を向いていることはなかなかありません。お互いがそれぞれの方向に進めば、共同生活は成り立ちません。

つまり、自分の帰る場所、癒しの場所としての二人の関係を維持するためには、相手を尊重し、自分が折れなくてはいけない場面が登場します。

二つの力のバランスを取るということは、相手を大切にする、つまり、お互いに尊重・協力(妥協)しあって、適切な関係を維持するということですから、結局、一部自己実現を抑える必要があるということです。

したがって、このカードの裏の意味は、バランスのとれた関係の維持から必然的に発生する、妥協、諦め、抑制、節制だと思います。

そして、それらが必要になるということは、自分か、相手か(関係の維持か)を天秤にかけて決断しなくては行けない場面が必ずあるということです。

逆の意味

以上を踏まえれば、このカードの逆の意味は簡単です。

単純にバランスが取れていない関係です。

どちらか一方、場合によっては二人とも、自分を優先している、もしくは優先せざるを得なくて、共同関係の維持どころじゃない場合。

他には、恋愛関係自体が片側にとっては、単なる楽しさの追求やさみしさの紛らわし等の一方通行的な感情で、相手側はそれに飲まれているだけ、つまりしかるべき時に続かなくなる関係という場合が考えられます。

いずれにせよ、お互いがお互いを大切にする関係ではないという場合でしょう。

まとめ

正位置
互いのバランスのとれた良好な関係がある。関係継続のために互いを尊重しあっている。しかし、その一方で関係継続のための妥協や決断を互いに乗り越えていく必要もある。

逆位置
力関係のバランスの取れておらず問題のある関係。両者もしくは片方が自分勝手もしくは受け身にふるまっていて関係継続が危うく、いずれ破たんすべき関係。
または、自分を優先せざるを得なくて、関係継続をあきらめなくてはいけない状況。

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テーマの著者 Anders Norén